"Emporio Armani" 90’s Houndstooth piped crest blazer

ジョルジオ・アルマーニの美学を、より軽やかで実験的な感覚へ落とし込んだのがエンポリオアルマーニです。イタリアンテーラリングの端正さを軸にしながら、時代の空気を取り込む遊び心を忘れず、トラッドをモードへ翻訳する手つきが魅力と言えますね。こちらでは英国調の柄使いとスクールジャケットの記号を、ミラノ流に磨き上げた逸品をご紹介致します。

千鳥格子の緻密な表情に、パイピングで輪郭を与えたブレザーであるこちらの逸品。

全体は細かなハウンドトゥースが均一に走り、遠目では落ち着いた面として見え、近づくほど柄のリズムが立ち上がる為、主張しすぎず奥行きが出ますね。ラペルから前立て、裾や袖口まで連続するパイピングが視線の通り道を整え、ジャケットの輪郭をくっきりと描く為、クラシックな柄にモードの緊張感が宿ります。

フロントは複数ボタンの縦ラインで構成され、体の中心がすっと整って見え、ポケットは大ぶりすぎないバランスで配されている為、スクール調の意匠が大人の表情へ着地しています。胸元にはEAのエンブレムワッペンが据えられ、モールのような立体感のある刺繍が陰影を作り、プリントでは出せない密度で品格を足してくれますね。

この個体にしかない付加価値は、90年代のエンポリオらしい生産背景と、当時のムードを象徴するデザインが同居している点と言えますね。タグにPRODOTTO DA ANTINEA S.r.lの表記が見られること、さらに日本代理店名がエンポリオ アルマーニ ジャパン株式会社となっていることから、体制が現在の表記へ統合される前の時代性が読み取れ、加えて旧JISの洗濯表示が確認できる為、1994年から1999年頃のレンジで整合する逸品と言えます。

素材がバージンウール100%である点も、この頃のエンポリオがディフュージョンでありながら、素材と縫製の質で差を付けていた背景を支え、プレッピーの記号を使いながら野暮ったくならない艶を残した仕上がりへ繋がっています。

日常では、ただのトラッドとして着るよりも、少しだけ外しを効かせることでこのジャケットの価値が立ち上がりますね。エンブレムの存在が会話のきっかけになりつつも、柄と配色は落ち着いている為、仕事の場でも浮きにくく、休日の食事やギャラリーのような場所でも知的なムードを保ってくれます。クラシックと遊び心の境界を、軽やかに渡れる一着です。

スタイリングとしては、クリーンなシャツに端正なスラックスを合わせると、ミラノ流のプレッピーが美しく映え、パイピングの輪郭が自然に際立ちますね。もう一案として、上質なハイネックトップスにロングコートを重ね、足元をレザーシューズで整えると、トラッドの柄がモードの文脈へ寄り、ワッペンの意匠がさりげないスパイスとして効いてくれます。

是非この機会に。