-SPECIAL- “VALENTINO” 1988–1992 SAGA Mink Shawl Collar Coat

生産技術を見直し、クリエイティビティの限界を押し広げるための技術や革新を取り入れることによって、

時を超えて愛されるアイテムやコレクションを生み出すVALENTINOより、スペシャルな逸品をご紹介致します。

（本作は1980年代後半〜1990年代初頭に製作された〈Valentino Furs〉ラインの一着であり、

当時のローマ本店アトリエでハンドメイドにより仕立てられたものです。

タグデザイン・フォント・SAGA MINKラベル、そして象徴的なVロゴボタンの意匠がその年代特有の構成を示しており、

ガラヴァーニ本人が監修していた“ローマの静謐なエレガンス”期を象徴する貴重なアーカイブピースです。）

艶を湛えたミンクが光をやわらかく受け止め、手に沿うしなやかな流れとともに静かな気品をまとい、

ローマのエレガンスを日常に落とし込むバランス感覚が端正に宿っているこちらの逸品。

（この時代のValentinoは、ミンクの表面光を均一化するため、

毛流れを微調整する「スリック・フィニッシュ」と呼ばれる工程を導入しており、

その結果、光の反射がより深く柔らかく映るのが特徴です。）

ショールカラーは首元に自然な立ち上がりをつくる為、顔まわりに陰影が生まれ、

前合わせは一つ留めのゴールドボタンでVロゴを控えめに主張し、

視線の重心を高い位置へ集めることで上半身がすっきり見える設計と言えます。

（このボタンは1988〜1992年頃にかけて登場した金属×エナメル構成の特注パーツで、

オートクチュール部門と共通金型を用いた希少仕様です。）

身頃は横に広がりすぎないままストンと落ち、裾にかけてほどよい分量を与えることで歩く度に面の光沢が流れ、

袖口は折り返しで厚みを作る為、手元の所作に柔らかな立体が生まれますね。

背面は切り替えの取り方が滑らかで、ミンクの毛並みが縦方向に整い、後ろ姿まで凛とした印象に仕上がっています。

（特にこの年代は、毛皮の継ぎ目を極限まで少なくする“フルパネル構成”が主流となり、

その結果、後ろ姿における流線の美しさが格段に向上しています。）

素材はSAGA MINKのラベルが示すとおり、繊細な毛並みの揃いと艶の均一性に優れ、

触れた瞬間のとろみと復元力の両立が格別で、軽さに対して保温性が高い点も特長と言えます。

毛足は必要以上に長くせず、表面が鏡のように光を滑らせる為、装いが過剰にならず、

上質さを静かに語れるのが魅力です。内側は滑らかな裏地で袖通りがよく、

立ち座りの多いシーンでもストレスが少ない為、長時間の外出でも快適に過ごせます。

（SAGAタグに“Superb Quality”と記された仕様は1986〜1993年頃に限定して使用されており、

現行では再現困難な軽さと密度を誇ります。）

ブランドの「Valentino Furs」タグとVロゴボタンの組み合わせは、

メゾンのクチュール由来の精度を象徴しつつ、表に見える情報量を抑えることで、

素材そのものの良さを引き出すデザイン哲学が貫かれていると言えますね。

（当時のガラヴァーニは「静けさの中の贅沢」をテーマに掲げており、

毛皮においてもラグジュアリーを表に出さず、質感と構造で語るスタイルを徹底していました。）

付加価値としては、まずSAGA基準の均質な原皮を厳選している為、

パネルごとの色ブレが少なく、経年でも艶が濁りにくい点が長期保有の価値に直結します。

次に、ボタン1点で留めるミニマルな構成が毛並みの連続性を妨げない為、

写真でも実物でも「面の美しさ」が際立つこと、さらに軽さと保温性のバランスがよく、

冬場のフォーマルから都会的なデイリーまで守備範囲が広いことが挙げられます。

ロゴに頼らず質で語るタイプのファーで、ワードローブの核として長く信頼できる一着と言えますね。

MOODとしては、気配で上質さを伝えたい方、装飾を減らして素材とラインで存在感を出したい方、

そして特別な日だけでなく移動や会食など現実の時間にしっかり馴染むコートを求める方に相応しいと考えています。

しっとりした艶は照明下で過度に主張しない為、シーンを選ばずに品を保てます。

（時代を越えても現代のワードローブに自然に溶け込む理由は、

“構築美で魅せる”というこの時期特有の思想が生きているからです。）

スタイリングとしては、デニムやスラックスといったシンプルなアイテムと合わせ、

リアルクローズに落とし込んだ着こなしは勿論のこと、ウエストマークのベルトを巻き付け、

持ち前の美しいシルエットや素材の艶感をより強調し、

フルレングスのスカートを合わせたフェミニンな着こなしもおすすめしております。

是非この機会に。