"Dior" 22AW Kim Jones design military detail hooded coat

ダメージ有り

ロックの緊張感を孕んだ端正なテーラリングを礎に、メンズのフォーマルを現代のエレガンスへ引き寄せてきたDiorより、スペシャルな逸品をご紹介致します。

Diorのメンズラインを、いまの時代の“品格ある実用着”へと再編集した、Kim Jones期らしい風合いが漂うこちらの逸品。

ワーク／ミリタリー由来の合理性を土台にしながら、パターンの取り方と付属の選び方で、街着としての完成度をきちんと上げている点に、このメゾンの強さが表れています。

まず年代については、品質表示タグに記載された品番「233C354H2033」が最も確かな根拠になります。現行のDiorの品番体系において、先頭の数字が年度・シーズンを示す構造を持ち、本個体はタグ仕様やロゴ表記（「DIOR HOMME」ではなく「Dior」表記のメインタグ）とも整合するため、2022年秋冬のプロダクトとして信ぴょう性高く位置付けられます。加えて、多言語で構成されたケアラベルや国内代理店表記も、2010年代末以降のグローバル統一仕様として自然に繋がります。

デザインの核は、フードから首元にかけて立ち上がる構築。前立てはボタンに加え、ジップも備えた二重構造で、閉じ方によって表情と防風性を調整できる設計です。ミリタリーコートの「守る」思想を踏襲しながら、前面に並ぶボタンのピッチや、身頃の余白の作り方はあくまで端正で、過度にギア感へ寄せないバランスが秀逸です。

ポケットワークもこの一着の説得力を担います。胸位置と腰位置にフラップポケットを配し、視線の重心を分散させることで、コート丈でも間延びしない立体感を形成。フラップの角の取り方やステッチの運びは抑制的で、道具としての視認性は確保しつつ、ラグジュアリーの静けさを壊さない“編集”が効いています。さらに、ボタンには「DIOR HOMME」刻印がなされており、ロゴ移行期の空気を金属パーツに残している点も、Kim Jones期の過渡を物質として感じさせるディテールです。

素材はポリアミドを主軸にしつつ、ヴァージンウールやリネンといった天然素材をトリミング等に差し込むハイブリッド構成。ナイロン一辺倒の軽さではなく、触感と陰影に“重み”を与える配分があるため、機能服でありながら装いとして成立する奥行きが生まれています。結果として、フード付きでありながらカジュアルに振り切れず、テーラリングの延長線上で着られる稀有な立ち位置に着地しています。

スタイリングは、過度にスポーティに寄せず、あくまで「端正な日常着」の延長でまとめるのがおすすめです。例えば、ドレス寄りのスラックスやミニマルなウールパンツに、上はシャツや薄手のトップスで面を整える。足元はレザーシューズや品のあるブーツで輪郭を締めると、ミリタリー由来のディテールが“実用”ではなく“様式”として立ち上がり、Diorらしいエレガンスへ自然に回収できます。

是非この機会に。