"MOSCHINO" Object sewn design tweed jacket

1983年に設立した品質の良さと実用性を兼ね備え、デコラティブでポップアートのようなコレクションを展開するMOSCHINOより、高貴な風格を持つ逸品をご紹介致します。

リトルブラックジャケットの格式をユーモアとエスプリで再構築した、こちらの逸品。

一見するとクラシカルなノーカラーのツイードジャケットの佇まいでありながら、そのディテールにはモスキーノならではの遊び心と風刺的な美意識が大胆に刺繍として投影されており、香水ボトル、リップスティック、レッドグローブといった“装いのエッセンス”そのものを、装飾としてアイロニカルに配した構成が印象的です。

素材には微細な凹凸と僅かな光沢を含んだブラックテキスタイルが用いられており、光の加減で静かに質感を変える表情が美しく、またポケットやヘムにはカットオフのようなフリンジ仕上げが施されており、ラグジュアリーでありながらあくまで”仕立てられたジョーク”としての品格を保っている点に、同ライン特有のクリエイティビティが感じられます。

特に象徴的なのが、左胸に取り付けられたリップスティックの立体的オブジェで、黒と赤の強烈なコントラストがジャケット全体のトーンに洒脱な緊張感を与えており、また香水ボトルのパッチには“Le Parfum CHEAP AND CHIC”の刺繍が施され、モードという概念そのものをユーモアに昇華させるラグジュアリーブランドとしてのアイデンティティが明確に提示されています。

また、フロントは大きめのマットボタンで留める仕様となっており、どこかカーディガンのような柔らかさを纏いながらも、ミニマルなシルエットの中に確かな構築力を内包しており、肩から裾にかけてのラインはコンパクトながらも立体的に仕上げられております。

裏地にはストライプ柄の滑らかなサテンが配され、袖通しの良さとともに、視覚的にもエレガンスを引き立てており、着脱時にまで品のある佇まいを演出してくれる構成です。

視線を誘うユーモアと、構築美の中に通底する批評性を日常に落とし込むことを可能にする本作は、ファッションを“語る”ことに楽しさを見出す方、そしてラグジュアリーの文脈において自身のスタイルを遊びたい方にこそ、ぜひ手に取っていただきたい逸品となっております。

静謐なブラックトーンに対して刺繍のグラフィカルなインパクトを際立たせるため、スタイリングとしてはニュートラルなウールスラックスやセンタープレスの入ったグレートラウザーズなどを合わせ、素材の差異で構築性を際立たせるのがおすすめです。また、インナーにはリブのハイネックやシルク混のロングシャツなど、マテリアルで品格を加えることで、アヴァンギャルドさとエレガンスのバランスを取ることができます。

是非この機会に。