-SPECIAL- "Christian Dior" 80's-90's Shaped flare silhouette collarless coat

創業以来「エレガント」をコンセプトに掲げ、

現在もその伝統は多様に表現されながらも

受け継がれているChristian Diorより、

スペシャルな逸品をご紹介致します。

起毛を抑えた上質ウールが面をなめらかに整え、直線と曲線の切り替えで身体の起伏を静かに拾い上げることで、クリーンな気品の中に確かな構築美を宿しているこちらの逸品。

首元は余白を生むVラインで、ノーカラーの為ネックアイテムを選ばず、顔周りをすっきり見せながら縦方向の視線を自然に導きますね。ラグランスリーブは肩の力みを抜きつつ、前身頃へ流れ込む切り替え線が立体感を描き、胸下で水平に入るウエストシームが重心を程よく上へ引き上げる為、前を留めても開けても品よく整う設計と言えます。

フロントのメタルボタンは控えめな艶で節度あるアクセントになり、間隔の取り方がリズムを生むことで、無駄を削いだ表情に奥行きを与えています。

後身頃はヨークの柔らかなカーブから複数のパネルラインが裾へ向かってのび、歩く度に広がりすぎないフレアがきれいな落ち感を生み、後ろ姿まで端正にまとめ上げるのが印象的です。袖は過度なボリュームを避けた細身のバランスで、インに重ねるアイテムを選びやすく、ミドルからロングにかけてのレングスが全身の比率をすらりと整えてくれます。

付加価値として、ノーカラー×ラグラン×パネルカッティングという組み合わせで、メゾンが大切にしてきた“ウエストで魅せる”エレガンスをモダンに翻訳している点が挙げられ、装飾を極力抑えたミニマルな面に仕立ての巧さを響かせる姿勢は、まさにDiorらしい理知的な美しさと言えますね。ディテールの主張ではなくラインで語れる為、日常の装いにもフォーマルな場面にも自然に馴染みながら、所作まで洗練されて見えるのが魅力です。

併載のタグディテールから、本作は後期80s〜前期90s（概ね1988–1992年頃）が最有力と言えます。首裏の“Dior”刻印入りのハンギングリングが備わり、白地に端正なセリフ体で**「Christian Dior」＋日本サイズ〈9〉を添えた織ネームが載り、さらに旧JIS記号の簡素な日本語ケアラベルと、当時の国内展開で用いられる連番型の品番「MD06C2600」が並ぶ為、改訂後の国際表記に切り替わる以前の作りと一致しますね。生地表示は毛93％・ナイロン4％・綿3％で、上質ウールの膨らみに対してナイロンが耐摩耗性と復元力を、綿が表面の落ち着きとコシ**をわずかに補う配合で、当時の“長く着て艶を育てる”設計思想がそのまま手触りに現れていると言えます。

この年代のDiorは、過度な装飾ではなくラインと面でエレガンスを語るのが持ち味で、首元の余白を活かすノーカラーと、肩の力みを抜くラグラン、そして裾へ向かって静かに広がるパネル構成が、メゾンの“ウエストで魅せる”美学をモダンに翻訳している為、前を留めれば重心がすっと上がり、開ければ落下線がまっすぐ伸び、所作まで端正に整うのが魅力です。さらに、金属調の4ホールボタンは時代の空気を反映した節度ある艶で、ロゴ主張を控えながらも素材の陰影を引き立て、使い込むほどに面が滑らかに熟れていく“育つテクスチャー”が味方になってくれますね。

すなわち、ラベルとケア表記が示す時代の確からしさと、設計が体現する静かな構築美が同じ方向を向く個体であり、アーカイブとしての価値と、現行ワードローブにすっと馴染む普遍性が高い一枚と言えます。長い時間を味方に、質感とシルエットで品格を重ねていける逸品と言えますね。

スタイリングとしては、比翼シャツにハイゲージタートルを重ね、クリースの通ったワイドスラックスとレザーブーツで縦を揃えると、ノーカラーのドレープが際立ち、エレガントでありながらモードの芯を感じる装いに仕上がります。あるいは、シルクスカーフを細く結んでVゾーンに差し、セットアップやミニマルなニットの上から羽織れば、メタルの少ない小物使いでも十分な格が立ち上がり、シックな着こなしをお楽しみ頂けます。

是非この機会に。