-SPECIAL- "Burberrys" 90's Collar switching two-tone trench coat

左袖口にシミあり

クラシックかつトラディッショナルな表現法を特徴とし、イギリス王室御用達とされるBURBERRYSより、スペシャルな逸品をご紹介致します。

異素材のブラウンカラーが造形の起点となり、英国クラシックを現代の輪郭へ引き寄せたBURBERRYSのウールトレンチコートであるこちらの逸品。

現行の”BURBERRY”表記ではなくブランド名が”Burberrys”となる旧ロゴである点は1999年以前の製造を示す確かな手掛かりで、加えて紺地の”OF LONDON”表記タグや、多言語で素材表記が入る品質タグの仕様から、グローバル流通が整った1990年代の個体として捉えるのが自然と言えますね。

この一着のデザイン性は、トレンチの記号を“足す”のではなく、“削って整える”美学にあります。ガンフラップやエポレット、カフストラップといった本来は機能の名残である要素が、過剰に主張せず、面の構成と視線誘導として働くよう整理されている為、ディテールを追っても散らからず、全体の佇まいが静かに締まります。特にダブルの前合わせは、ボタンの配置が視線を縦に導きやすい構造で、胸元から裾へ“直線の骨格”が通ることで、曖昧になりがちなロング丈の印象を端正に保ってくれますね。

素材がウール100%であることも、この設計思想を強く後押ししています。コットンギャバジンのように張りでエッジを立てるのではなく、ウール特有の落ち感が、肩から裾までを一枚の面として滑らかに繋げる為、動いた瞬間に“線ではなく陰影”でシルエットが立ち上がります。背面ヨークは、風除けという由来を越えて、歩行時に生地が一拍遅れて揺れる構造的なレイヤーとして機能し、後ろ姿に奥行きを生み出してくれるのが上質です。

そして本個体をスペシャルにしているのが、襟の異素材と配色設計ですね。ベージュのボディに対し、ブラウンの起毛感を載せることで、顔まわりにだけ“温度”と“密度”が生まれ、視覚的な重心が上に上がります。その結果、ロング丈でも間延びせず、上半身が引き締まって見える。これは装飾ではなく、プロポーションを整えるための設計と言えます。さらに、起毛した襟は光を吸い、ボディのウール面が柔らかく反射する為、同じ落ち着いたトーンの中で質感差が陰影のグラデーションをつくり、近距離で見た時の情報量がぐっと増すのも魅力です。いわゆる「カントリー」や「ハンティング」を想起させるディテールですが、ここでは土臭さに寄らず、都市的な洗練として成立しているのがディオール的な上品さにも通じる“クラシックの扱い方”だと感じますね。

ベルトの存在も見逃せません。結べばウエストに一点の緊張が生まれ、ドレープが“外へ逃げる”のではなく“内へ収束する”為、立体感が一段深く出ます。逆に垂らせば、ベルトの縦線が前身頃の縦方向を補強し、揺れる長さがドレッシーな余韻として残る。どちらも正解で、着方そのものがデザインの一部になっているのが、ヴィンテージの上質さだと言えますね。

スタイリングは、シャツとウールスラックスで面をきれいに揃え、コートの陰影と襟の質感差を主役にすると完成度が上がります。もう一案としては、ミニマルなニットに端正なロングスカート、もしくはストレートなパンツを合わせ、ベルトは軽く結ぶ程度に留めると、クラシックの記号を残しながらも今のムードに寄せられますね。

是非この機会に。