"HERMES" Late 70s-Early 90s ostrich leather driving gloves

馬具工房としての出自を起点に、素材選びから縫製、金具の仕立てに至るまでを一つの美意識として積み重ね、実用品を最上の嗜みへと昇華してきたHERMESより、手元に宿る職人技を端正に味わえる逸品をご紹介致します。

スポーツギアの軽やかさを備えながらも、装い全体を崩さずに品格へ繋げてくれる存在であるこちらの逸品。

まず素材には、最高級オーストリッチレザーが用いられており、クイルマークが均一に立つ表情によって視線を引き寄せつつ、触れた瞬間に分かるしなやかさが手の動きへ自然に馴染むため、長時間の着用でもストレスを感じにくいのが魅力ですし、柔らかさと強靭さを併せ持つ特性ゆえに、時を重ねても形が崩れにくい点は明確な付加価値と言えますね。

甲部分には、ドライビンググローブらしい網目状の意匠が丁寧に組まれており、装飾として成立しながら通気性と可動性へも寄与する設計で、機能がそのまま美しさに置き換わっている点にHERMESの思想が表れています。

指先へ向かうラインは過度に細くせず、手の輪郭を端正に整える分量感が残されているため、クラシックに寄せすぎないモードな印象も作れますし、ジェンダーを限定しない手元のバランスとして落とし込みやすいのが嬉しいポイントです。

開口部にはセリエのスナップボタンが配され、HERMES PARISの刻印がはっきりと立った肉厚な字体で残っていることに加え、金属の色味が深く落ち着いた表情へ変化しているため、当時の厚みのあるメッキや仕上げの良さが感じられ、年代物ならではの説得力を静かに支えてくれますね。

縫製はサドルステッチ由来の力強さを感じさせる運針でまとめられており、目立たせる為の誇張ではなく、負荷のかかる小物を長く使うための合理として美しく成立している点が、馬具の系譜を持つブランドらしい魅力ですし、内側には当て革としてスエード調の補強が入る構造のため、グリップ感と耐久性の両面で完成度の高さが伺えます。

推定年代を1980年代前半から1990年代初頭としている理由についても明確で、付属する横長のオレンジ封筒に濃茶の帯が走り、その帯の中へ小さな馬車ロゴが等間隔で並ぶパッケージ仕様が確認できることに加え、この意匠は1990年代半ば以降には見られにくい傾向があるため、時代背景と整合する形でレンジを絞り込めますし、スナップ刻印のフォントの骨太さや金具の質感が当時の個体に多い特徴と一致する点も、信ぴょう性を補強しています。

さらに小物は付属品が残りにくいカテゴリである為、専用封筒がセットで残っていること自体が希少性へ直結し、コレクターズアイテムとしての価値を一段引き上げてくれるのも、この個体ならではの強みと言えますね。

日常の中で、実用のために選ぶのではなく、所作を美しく整えるために手袋を選びたい方へ特におすすめで、装飾を声高に語らずとも素材と縫製の説得力で気品を作れるため、静かな贅沢を理解される方にこそ手に取って頂きたい逸品です。

スタイリングとしては、端正なコートや構築的なジャケットに合わせてクラシックなムードを引き締めるのはもちろん、上質なシャツとスラックスのようなミニマルな装いへ添えることで手元に奥行きを足せますし、ドレス寄りのセットアップに一点だけスポーティな背景を忍ばせる着こなしも自然に成立する逸品となっております。

是非この機会に。