"Maison Margiela" 16SS Bow tie draping shirt

匿名性を軸に、解体と再構築によって”既存の服の常識”を静かに更新してきたMaison Margielaより、アイコニックな逸品をご紹介致します。

ボウタイというクラシックな記号を、装飾ではなく”構造”として成立させているこちらの逸品。

首元から一体化する長いボウは、きっちり結び切る為のパーツというより、垂らす分量そのものが縦のラインを作り、上半身の余白を整える設計と言えますね。

結び目の位置を高く見せることで顔まわりに緊張感を残しつつ、先端へ向かう落ち感が空気を含むように揺れ、マルジェラらしい”端正さと曖昧さ”を同居させています。

生地は、光を強く跳ね返さないマットな表情で、触れた瞬間に分かる薄さとしなやかさが魅力で、動いたときのドレープがそのまま造形になるのが美点です。

肩から身頃にかけては過度に主張せず、ボウの縦線と相まって面がフラットに見える為、ジャケットの内側でも一枚でも、“きちんと見えるのに硬くない”バランスへ着地します。

袖口は折り返しでニュアンスを作れる構造で、所作の中で陰影が増える点も、ベーシックに見えて実は情報量がある、と言えます。

また、内側のカレンダータグと「1」に丸が付く仕様から、メゾンが提案するウィメンズラインの文脈に位置付くことが読み取れますね。

そして16SSという時代感は、ガリアーノ体制で”クラシックの引用を、別物として再構成する”ムードが強まった時期と整合します。

実際に当時のコレクションでは、50年代的なレディライクさや和の参照など、相反する要素を一つのエレガンスへ束ねる視点が語られており、このボウタイもまた、正統のフォーマルを借りながら、結び方や分量で意味をずらすアプローチとして自然に繋がります。

スタイリングとしては、まずミニマルなスラックスやロングスカートに合わせ、ボウの縦落ちを主役にして頂くのが綺麗ですし、次にテーラードジャケットやロングコートの内側へ忍ばせ、襟元だけで”式典性”を足していく着方も相性が良いですね。

是非この機会に。