"Max Mara" CUCITO A MANO silver tag hand-sewn tailored coat

イタリアで創業して以来、モダンなプレタポルテファッションのパイオニアとして注目を集め、エレガントでコンテンポラリーなアイテムを展開するMax Maraより、スペシャルな逸品をご紹介致します。

軽やかな落ち感をもつ上質ウールが直線をきれいに描き、長めのノッチドラペルが深いVゾーンをつくることで縦のラインがすっと伸びる、イタリア仕立ての気品を端正に映すこちらの逸品。

身頃は余白を活かしたストレートシルエットで、肩は過度に盛らずに自然なラインへ整えているため、羽織った瞬間に体から生地が離れすぎず、程よいゆとりで輪郭だけをきれいに際立てますね。

そしてフロントは装飾を最小限に抑えたミニマルな構成で、胸のバルケットポケットと腰のフラップポケットがリズムを与え、サイドには深めのスリットが入るため、歩くたびに裾が柔らかく揺れて軽さが生まれる設計です。裏地はなめらかで袖通しが良く、ロング丈でも快適に着られる実用性が備わっています。

付加価値として、内側のホワイト織りタグに“MaxMara / MADE IN ITALY”の表記が入り、さらに“小タグのCUCITO A MANO（手縫い仕上げ）”が添えられている点は見逃せず、1990年代後半〜2000年代前半に見られるアーカイブ期のハンドフィニッシュラインに連なる一着と言えます。

MaxMaraで用いられる“CUCITO A MANO”は、全ての縫製を手で行うという意味ではなく、要所を職人の手で据え付け・まつり上げて仕上げる工程を含むことを指し、だからこそミシン一辺倒の縫い上がりとは異なる“ふくらみ”と“しなやかな可動域”が生まれると言えますね。具体的には、ラペル周りの芯の据え付けや見返し端のまつり、裾・袖口の処理、裏地の留めなどを手で行うことで、生地に過度なテンションが掛からず、縫い代の厚みも抑えられる為、着た瞬間に重さが下へ抜けるような落ち感と、体の動きに沿って戻る自然なドレープが実現します。

そして、手縫いで留めたラペルは“記憶”を宿しやすく、プレス後も柔らかなロールがきれいに保たれ、胸元のVゾーンがいつも端正に見える点が実用的な美点と言えます。また、裾や袖のまつりを手で仕上げることで表側に縫い目の凹凸が目立ちにくく、光の反射が乱れないため、黒の面が静かに均一に映り、結果としてコート全体の高級感が一段引き上がりますね。

さらに、機械縫いに比べて糸に遊びが残るため、座る・歩く・腕を上げるといった反復動作でも生地のストレスが溜まりにくく、糸切れやパッカリングのリスクが軽減されます。修理や丈直しの際にも余力が効きやすいので、体型や用途の変化に合わせて長く付き合えるという“時間に対する強さ”も大きな価値だと言えます。

MaxMaraでは特にダブルフェイスのコートでこの思想が顕著ですが、本作のような総裏のテーラード型でも、要点を手で仕上げることで軽さと品の良い立体感がしっかり引き出されていると評価できますね。

スタイリングとしては、シャツドレスにロングブーツを重ねて裾のスリットに動きを与える着こなしの他、ミニマルなクルーネックニットとすっきりしたプリーツスカートで分量を整えたり、細身のレザーベルトでウエスト位置だけを示して表情に変化をつけたり、タイドアップしたシャツにローファーを添えて静かな緊張感を作るのも良いですね。

是非この機会に。