"MAISON MARGIELA" 21SS Long tail design band collar shirt

既存の概念に挑戦し続け、老若男女問わず愛され続けており設立以来から今でも第一線で活躍し続けているMaison Margielaより、アイコニックな逸品をご紹介致します。

静けさの中に潜む革新性を映し出す、バンドカラー仕様の潔さと、ロングテールならではのドレープ感が美しいこちらの逸品。

こちらの逸品が発表された21年SSシーズンのテーマは「新たな愛の形＝ニュー・ロマンス（new romantics）」。ジョン・ガリアーノが提唱したのは、アイデンティティをリコンストラクトするという行為の中に宿る“破壊と再生”のロジック。その思想を裏打ちするように、本作では伝統的なドレスシャツの構造を踏襲しながらも、襟を削ぎ落とし、カラーレスへと還元されたフォルムが目を引きます。

素材には上質なコットンポプリンが使用されており、グレーがかった柔らかな光沢のある色調は、ミニマルでありながらも一切の妥協を感じさせない緊張感を纏っています。パターンは全体的にゆとりを持たせながら、ウエストにかけてわずかに絞りが効いており、着丈の長さとラウンドカットの裾が、動きにリズムを与えてくれます。

そして、特筆すべきはウエストにさりげなく刺繍された「1989」の年号と月桂樹モチーフ。この年号はMaison Margiela創設の年を意味しており、ブランドの出自を静かに語る象徴的ディテールとして、物語性を奥底に宿しています。その白糸で描かれた刺繍は、見る者の視線を引きつけながらも、装飾性より思想性を優先させたマルジェラらしい表現と言えます。

首元にはブランドを示すカレンダータグが配されており、数字の「10」にマークが施されたこの一枚は、メンズラインにあたるアイテム。ボタンは小ぶりなホワイトのシェル調で統一されており、モノトーンで構成された全体像にさらなる統一感を与えています。

過剰な装飾を削ぎ落とすことで、語られぬ美学を浮かび上がらせるマルジェラの哲学が、細部にまで貫かれた一着。日常を静かに引き締めたい方や、他者との距離を美しくデザインしたい方にこそお手に取っていただきたい、2021年春夏の思想が息づく逸品となっております。

スタイリングとしては、タックインしてあえてフォーマルなスラックスと合わせることで、ジェンダーやシーンの境界を超越した現代的なエレガンスを演出できますし、裾をあえてアウトで見せ、アシンメトリーなジレやロングコートとレイヤードすれば、構築的で彫刻的なフォルムを強調するスタイルにも昇華できます。また、ボタンを上まで留めることでミニマルな緊張感を纏わせたり、開けて抜け感を演出するなど、着る人の意志に沿って自在な変化を楽しめますね。

是非この機会に。