"Yves Saint Laurent" 80's-90’s Diamond quilted design leather bag

モードの歴史にエレガンスと自由を刻み、リヴゴーシュの思想とともに日常の装いそのものを洗練へ導いてきたYves Saint Laurentより、アイコニックな逸品をご紹介致します。

Yves Saint Laurentの日本国内ライセンス期を象徴するボックスシルエットが美しいこちらの逸品。

まず年代推定の根拠として、付属カードに記された「株式会社 西川」の表記が決定的で、80年代後半〜90年代初頭にかけて同社が担っていた国内正規ライセンス生産の文脈と合致します。加えて、カードの組版やムッシュ・サンローランのポートレートを添えた当時特有のパッケージング、そして内側の横長ロゴプレートのフォントバランスと面取りの仕上げが、そのレンジを強く裏付けますね。

デザインは、上部の滑らかなスムースレザーがつくる端正なフラップと、下半分に走るダイヤモンドキルティングの対比によって、視線の重心が美しく設計されています。中央にはベルトタブを配し、直線の気配を崩さずに陰影を刻むことで、ただの“クラシック”で終わらない緊張感を残しているのが印象的です。

金具は過度に主張せず、スクエアのフォルムに沿って静かに光を返す配置となっており、バッグ全体の構築性をさらに強調します。ストラップは身体のラインに沿って馴染み、持った時の収まりが良く、フォーマルの延長線上で日常に落とし込めるバランスに仕上がっています。

そして、この個体の美点として外装のストイックさに対し、開閉の所作で内装の赤が現れるコントラストが挙げられます。外側の静けさと内側の強さが一体となる構成は、当時のサンローランらしいエレガンスの解釈を、国内クラフトの精度で形にしたものと言えます。

スタイリングとしては、ミニマルなテーラードジャケットや端正なコートに合わせ、直線のシルエット同士で緊張感を揃えるのがおすすめです。あるいはドレスライクなワンピースやシャツドレスに添え、所作の中でバッグの構築美を際立たせる着方も良いですね。夜の装いであれば、シャープなスラックスや品のあるローファーと合わせることで、ムッシュが遺した“ル・スモーキング”の精神を現代のバランスで引用できます。

是非この機会に。