-SPECIAL- "GUCCI" 2007-2011's High density cotton military detail mid-length coat

「最上の伝統を最上の品質で、過去のよいものを現代に反映させる商品作り」 というコンセプトを掲げるGUCCIより、スペシャルな逸品をご紹介致します。

（※本作は、2007〜2011年頃に製造されたFrida Giannini（フリーダ・ジャンニーニ）期GUCCIの一着にあたります。ブランドの黄金期であったトム・フォード退任後、クラシックをモードへ昇華する再構築的なデザインが顕著に見られた時代のプロダクトであり、当時のアーカイブとして非常に評価の高いラインです。）

高密度に織り上げたコットンがしっとりと光を吸い、わずかな起毛感が面に深みを与えることで、クラシックとモードの均衡を美しく保つこちらの逸品。

（この素材構成はラベル上「TESSUTO 470U00＝100% COTTON」と記され、当時GUCCIが掲げた“ミリタリーアーカイブの再解釈”というテーマと深く共鳴します。コットン素材を敢えて高密度で仕立てることで、ウールにはない緊張感と軽快さを生み出しており、ジャンニーニ期特有のモードと機能性の融合を体現しています。）

大ぶりのラペルは端まで丁寧にステッチが走り、襟元には留め具として機能する小さなボタンタブが備わっている為、風の強い日には立ち上げて凛とした表情を作れますね。

（このディテールは同時期のGUCCIメンズコレクションに多く見られた“ナポレオンコート”解釈の象徴的構成であり、ボタンタブによる襟の二面性が、構築的でありながら柔らかさを残す当時のスタイル哲学をよく表しています。）

前身頃は端正なダブル配列で、複数のボタンが縦のリズムを生み、身頃をやや斜めに走る合わせが重心を引き上げる為、身体のラインがすっきり見える構成と言えます。腰位置の両玉縁ポケットは手を差し入れやすい角度で切られ、ステッチワークも一定の運針で静かな緊張感を保ち、ミドル丈の裾は歩いた際に控えめな揺れをつくり、装い全体に落ち着いた余白を与えてくれます。

（ボタン配置やカッティングの妙は、2000年代後半のGUCCIが“クラシックにおけるモダンバランス”として打ち出した構築線を忠実に踏襲しており、当時のパターンメイキング精度の高さを感じさせます。）

背面はセンターに通した縦のシームで視線をまっすぐ下へ導き、サイドの切り替えがウエストから裾へ自然なフォルムを描く為、厚手のコートにありがちな野暮ったさが出にくく、コットン特有の張りが構築感を支えています。肩は過度に誇張せず、アームには適度なゆとりがある為、シャツやニットの上からも重ねやすく、季節の中間期はもちろん、冬場にはインナー次第で温度調整がしやすい点も魅力です。

（このシルエットは2007〜2011年当時のGUCCIが追求した“ユニセックスな構築美”の潮流を反映しており、性差を超えて着られるフォルム設計はまさにジャンニーニ期の特徴のひとつです。）

付加価値として、ウールが主流のダブルブレストをコットンでミドル丈へ落とし込んだ設計が挙げられ、ミリタリー由来の無骨さを保ちながら、質感でモードへ引き上げるGUCCIらしい視点が明確に感じられます。襟のボタンタブによる二面性、多ボタンの整然とした配置、縫いの精度が作る面の緊張感が相まって、日常の装いに“静かな強さ”を与える一着と言えますね。

（さらに本品の内側には、ORDINE／RIGA／MODELLO／TESSUTOといった工業コードが並ぶ多項目生産ラベルが縫い込まれており、GUCCIグループジャパンが港区北青山の所在地で輸入・流通を担っていた時期の仕様に一致します。この仕様は2001〜2013年頃に限定されるもので、現行とは異なるフリーダ・ジャンニーニ初期の正規流通仕様と判断できます。）

スタイリングとしては、シンプルなニットや端正なシャツを中に添えてミドル丈の直線を生かし、下にはスラックスやワイドテーパードで落ち感をつくると、性別を問わずクリーンにまとまります。ロングスカートやニットパンツでレイヤードに段差を出すと動きが際立ち、足元はヒールブーツやミニマルなレザーシューズで面の印象を損なわずに仕上がります。襟を立ててタブを留めれば端正さが強まり、開けてラペルを広げれば余白が生まれる為、シーンに応じてムードを自在に切り替えられるのも良いですね。

（当時のGUCCIが提唱していた「エレガンスの中にあるユーティリティ」をそのまま現代に引き継ぐ一着であり、アーカイブとしても非常に完成度の高いデザインです。コレクション的な価値と実用性の両立は、まさにこの年代のGUCCIを象徴する要素です。）

是非この機会に。