-SPECIAL- "JEAN PAUL GAULTIER" 90's-00's Waist shape A-line silhouette black color super long coat

クラシックラインの精神を現代的に研ぎ澄ませた、ドラマティックなフルレングスのシルエットが魅力のジャンポール・ゴルチエのチェスターコートであるこちらの逸品。マットなブラックのカラーリングが、同設計の魅力をよりシャープに際立たせます。

まず年代について。内側に配された“Jean Paul GAULTIER CLASSIQUE PARIS”の黒地×赤刺繍ラベルは、既製服クチュール系ラインに用いられた意匠で、同系統のラベル運用は1990年代後半〜2000年代前半に確認されるため、本作は推定1990s後半〜2000s前半に位置づけられると言えますね。

外観はノッチドラペルの端正な顔つきに、比翼ではなく5つのくるみボタンをあしらったフロントが縦の流れをつくり、胸にはシングルのウェルトポケットを控えめに配置。視線を下へ導くミニマルな設計で、上半身をすっきり見せながら、裾に向かって緩やかに分量を増して落ちるAラインが生まれるため、歩みとともに裾がわずかに揺れ、ダンスのような余韻を装いにもたらします。

背面はウエストダーツを効かせた立体設計に加え、左右対称に配された飾りボタン群が背中の起伏を強調し、コルセット的な“くびれ”の表情を生み、ゴルチエの歴史意匠への眼差しと身体性の強調が端正に同居していると言えますね。

素材は表面にわずかな起毛感をもつ上質なウールブレンド。ここでマットなブラックがもたらす効果として、光をより強く吸い込み陰影が深まり線がさらにシャープに見えること、加えて共布くるみボタンとの一体感が高まりミニマル度が増すことが挙げられます。屋内光では黒に見まがうほどの静けさを保ちながら、自然光ではマットなのニュアンスが現れて奥行きが出るため、他の黒よりも硬くなりすぎないのが魅力です。ダーツや切替は近距離でふっと立ち現れる程度に控えめとなり、シルエットの美しさが前面に出ます。

“CLASSIQUE”期のゴルチエは、歴史的テーラリングに対する敬意と実用性を両立させ、構築と流動のバランスを取ることで日常に溶け込むエレガンスを提示してきました。本作もその系譜にあり、過度な装飾に頼らずプロポーションで語る一着と言えます。ネイビーのニュアンスにより、フォーマルから日常までの振れ幅がやや広がり、昼夜の光環境で表情が変わる点も付加価値です。

MOOD視点での届け先としては、装いのトーンを引き締めつつ、黒よりもわずかに柔らかさを添えたい方に。静けさと威厳を両立させたいワードローブに最適です。

スタイリングとしては、薄手のニットをインに差して直線的な落ち感を生かすだけで完成度が高まります。もう一案は、滑らかなシャツとプレーンなボトムスで上下を細く整え、コートのフレアを主役に。マットなブラックが持つ“締まり”と“柔らかさ”の両面が、ミニマルな選びで自然に引き立ちます。

長い時間を経ても“線の美しさ”で語れる、ジャンポール・ゴルチエのクラシックを堪能できる逸品となっております。

是非この機会に。