"Marc Jacobs" A soft flowing flared silhouette long coat

最上部ロープボタン欠損

左襟シミ有り

裏地一部シミ有り

1984年にMarc JacobsとRobert Duffyが設立したニューヨーク発ブランドで、レディ・トゥ・ウェアとアクセサリーを軸に“遊び心×品質”を体現してきたMarc Jacobsより、コンセプチュアルな逸品をご紹介致します。

縦のラインを強調するロングシルエットと、ウエストから裾へかけてしなやかに広がるフレアのフォルムが美しく、クラシカルな気配と現代的なモード感が同居したこちらの逸品。

フロントには同素材でくるんだ大きめのボタンが縦に連なり、装飾を抑えたデザインの中で静かなリズムを生み出していて、比翼ではなくボタンを“あえて見せる”ことで、どこかドレスのような端正さとレトロなニュアンスを感じさせる表情に仕上がっていると言えますね。

コンパクトなショルダーラインからウエストにかけては身体に沿うようなダーツと切り替えが施されており、そこから裾に向けて緩やかに分量を持たせている為、前を閉じて着用したときにはドレスコートのような一体感が生まれ、歩くたびに裾が揺れてシルエットの美しさが際立ちます。

背面にも縦方向の切り替えを丁寧に配することで、360度どこから見てもラインが崩れにくく、ロング丈でありながら重たさよりも縦にすっと伸びる印象が残るバランスになっていると言えます。生地はしっかりと目の詰まったウールを用いていて、ほんのりと起毛した表面が光を柔らかく受け止める為、深い色味でものっぺりせず、冬の街灯りの中でも品よく映える質感です。

内側を開くと、ストライプ柄の総裏地が現れ、裾まわりには淡いトーンのフラワープリントが額縁のようにぐるりと走っていて、このブランドらしい“内側に忍ばせた遊び心”が感じられる仕立てになっていますね。

歩いたときや椅子に腰かけたときに裏地がふと覗き、シックな表情の中にだけ自分だけが知る可憐さが立ち上がる構造で、コートを脱いだ瞬間まで楽しめるデザインと言えます。裏地にはさらりとした素材が用いられている為、ニットやジャケットの上から羽織っても滑りが良く、マキシに近いロング丈でしっかりと体を包み込みながら、日常の動作を妨げない着心地に整えられているのも嬉しいポイントです。

全体として、ロマンティックなディテールと端正なテーラリングのバランスが非常に美しく、モード感のあるロングコートを探しながらも甘さやクラシカルな雰囲気も大切にしたい方に強く響く一枚と言えますね。トレンドに左右されにくいシルエットですので、数年単位ではなく長いスパンでワードローブの核として活躍してくれるアウターとして落とし込んで頂けます。

スタイリングとしては、ミニマルなワンピースやロングスカートの上からさらりと羽織れば、ドレスコートのようなエレガントな印象が高まり、特別な場面にも相性の良い装いになります。また、シャツや細かなピッチのニットをインナーに選び、ボタンをいくつか開けて着崩すことで、マークジェイコブスらしい少しひねりの効いたモードなムードも引き出せますね。

是非この機会に。