-SPECIAL- “LOEWE” Calle oversized padlock leather bag

スペインの老舗メゾンとして、革そのものの美しさを最優先にしながら、時代ごとのムードを静かに更新してきたLOEWEより、ブランドがモダンへ舵を切った時代を象徴するスペシャルな逸品をご紹介致します。

身体に沿うように生まれるドレープと、特大のパドロックモチーフが強い記憶を残すデザインであるこちらの逸品。

まず惹かれるのは、柔らかなレザーが生む量感で、荷物を入れた時に自然な陰影が折り重なる為、バッグが硬い箱ではなく、装いの一部として呼吸してくれるような表情がございますね。トップのハンドルは交差するように配されており、持ち上げた瞬間に口元がすっと寄る構造だからこそ、無造作に見えてもだらしなくならず、意図のある崩しとして成立している点がロエベらしい品格と言えます。

フロントのパドロックは、金具だけで完結させず、樹脂のような質感を重ねた造形でまとめられている為、ゴールドの艶が一点に寄りすぎず、彫刻のような立体感として黒革に沈み込みます。さらに留め具としての役割も担う設計となることで、見せる為の装飾ではなく、触れて動かす為のデザインへ昇華されており、持つ人の所作まで美しく整えてくれますね。

内装は深いパープルのライニングが印象的で、外装のストイックさと対比するように、開いた瞬間だけ静かな色気が覗くのが魅力です。内側にはレザータグが配され、LOEWE MADRID 1846の刻印が確認できる為、ロゴ刷新以前のクラシックな時代性が読み取れますし、キーを連ねたストラップが備わっている構成も相まって、道具としての完成度がきちんと担保されています。底面には鋲が配されている為、置いた際にレザーが直接擦れにくく、柔らかな個体を丁寧に扱える配慮まで行き届いていますね。

年代については、モデルのカリエが2008年に登場した背景があり、加えて内側のロゴ表記が2014年以降の新ロゴ以前である点、そしてデザインの方向性がスチュアート ヴィヴァース期のモダン化と整合する点から、2008年から2012年頃の個体と捉えるのが信ぴょう性の高い見立てと言えます。現在のロエベが構築や幾何学で魅せるのに対し、この時代は革の色気と量感で勝負している為、同じメゾンでも空気がまったく異なるのが面白いところです。

このバッグの付加価値は、ロエベが得意とするレザーの柔らかさを最大限に見せながら、アイコンとして機能するパドロックを大胆に据えることで、クラフトの上質さと遊び心を同時に成立させている点にあります。主張は強いのに子どもっぽくならないのは、面で魅せる革の質感と、金具の量感のバランスが丁寧に設計されている為で、持つだけで装いの重心が自然に整うのがこのモデルならではですね。

スタイリングとしては、端正なロングコートやミニマルなジャケットに合わせると、バッグのドレープが硬さを中和し、都会的な抜けが生まれますし、落ち感のあるセットアップやシンプルなロングワンピースに添えることで、パドロックの造形がアクセントとなり、ジェンダーを問わずモードへ寄せられます。素材の余韻を活かしたい日は、上質なシャツや滑らかなニットに合わせると、革の表情が主役として綺麗に立ち上がりますね。

ロエベの革が持つ色気と、時代の転換点のデザイン性を同時に味わえる逸品となっております。

是非この機会に。