Classic or Avant-garde
パリの美意識から見つける、貴方らしい着こなし
INTRODUCTION
貴方は、どちらのスタイルがお好みですか?
トレンチコート、タイ、スラックスを、ゆとりと柄によって街へ馴染ませたClassic。
デニムジャケット、ストライプシャツ、ワイドパンツの比率を変え、日常着を新しく見せたAvant-garde。
使っているのは、どちらも見慣れた服です。それでも印象が大きく異なるのは、「何を着るか」以上に「何を残し、どこを変えるか」が違うからです。
今回の比較では、どちらが優れているかを決めません。二つのLOOKから貴方が惹かれた要素を見つけ、次の着こなしへ持ち帰ることを目的とします。
| CLASSIC OR AVANT-GARDE? | CLASSIC | AVANT-GARDE |
|---|---|---|
| 出発点 | トレンチ、タイ、スラックス | デニム、シャツ、ワイドパンツ |
| 変える部分 | フィット、柄、小物の繋がり | 丈、幅、服の見え方 |
| 視線の流れ | 上から下へ滑らかに繋ぐ | 上半身と下半身に差を作る |
| 個性の作り方 | 同系色の中で情報を重ねる | 比率と構造に変化を加える |
| 最初に試すなら | コートのベルトを緩く結ぶ | 短いアウターと長いボトムを合わせる |
WHY PARIS?
パリらしさは、特定のアイテムの出自だけでは決まりません。
トレンチコートはイギリスを起源とするアイテムですが、雨の多いパリでも、その機能性と上品な佇まいから長く親しまれてきました。 クラシカルでありながら実用的。そのバランスは、パリらしい装いを語るうえで欠かせない要素です。
一方でパリは、パリコレクションに象徴されるように、幾度も時代の美意識を更新してきた街でもあります。 ジェンダーの境界を軽やかに越える感覚、鮮やかな色使い、対照的なスタイルが美しく交わる自由さ。
伝統と革新。その両方を自然に受け入れる空気が、パリのファッションを形づくっています。
この街のファッションを面白くしてきたのは、伝統だけでも、新しさだけでもありません。異なる文化から生まれた服を受け入れ、残す部分と変える部分を選び直してきたことです。
今回はそんなパリの美意識になぞらえながら、具体的なスタイリングを見ていきましょう。
PARIS CLASSIC|THE ART OF SOFTENING
端正な服を、動ける状態へ整える
トレンチコート、シャツ、タイ、スラックスという基本形には、正装に近い緊張感があります。
このLOOKでは、その形を崩すのではなく、服と身体の間に空間を作っています。
ロングトレンチはウエストを強く絞らず、ワイドスラックスとともに長い縦線を形成。襟、前合わせ、ベルト、プリーツには端正さを残しているため、ゆとりがあっても全体は曖昧になりません。
もう一つのポイントは、柄を減らさずに静かに見せていることです。
Christian Diorの柄シャツと、新聞紙面を思わせるプリントタイ。格子、風景、文字という異なる図像を重ねながら、黒、白、生成りの範囲に色を限定しています。
情報量を抑えるのではなく、色へ規則を設ける。そのため、コートを閉じれば首元だけに柄が残り、脱げばシャツ全体が現れるという変化も、過剰には見えません。
仕上げを担うのは小物です。
HERMÈSのキャスケット、レザーグローブ、GUCCIのサングラスを、ベージュからブラウンの範囲で統一。HERMÈS Alcazarバッグのゴールドチェーンと、手元の金具も連動しています。
大きなコートには小さなバッグを、複数の柄には限られた色を合わせる。すべてを控えめにするのではなく、強弱を整理することで品格を保っています。
| CLASSIC STYLE MAP | LOOKでの役割 | 手持ちの服で試すなら |
|---|---|---|
| 長いコート | 柔らかな縦線を作る | ベルトを強く締めず、襟だけを整える |
| ワイドスラックス | 正装の緊張を和らげる | センタープレスで端正さを残す |
| 柄シャツとタイ | 色を増やさず奥行きを加える | 柄は二つまで、同じ色域で揃える |
| 革小物 | 全身の色と品格を繋ぐ | バッグとベルト、または靴と時計を合わせる |
ここから持ち帰りたいのは、同じブランドやアイテムを揃えることではありません。
端正な服を着るとき、すべてを硬く整えず、フィットだけを緩める。柄を使うとき、数を減らすのではなく色を揃える。この二つだけでも、正装と日常の間に自然な余白が生まれます。
PARIS AVANT-GARDE|THE ART OF SHIFTING
見慣れた服の比率を変える
こちらの出発点は、淡いデニムジャケット、ブルーのストライプシャツ、アイボリーのワイドパンツです。
アイテム自体は身近ですが、通常とは異なる長さと幅で組み合わせています。
ジャケットは短く、シャツのカフスとパンツは長く設定。上半身を小さく、下半身を大きく見せることで、服だけでなく身体の比率まで変化して見えます。
ワイドパンツは静止するとロングスカートのようにも映り、歩くと左右の脚とスリットが現れます。パンツかスカートか、メンズかウィメンズかという分類を、動きによって曖昧にしています。
1980年代、Rei KawakuboやYohji Yamamotoらがパリで提示した服も、異なる比率や自由なレイヤードによって、西洋服における身体と美しさの基準を問い直しました。Vogueは、この時代を服が概念として扱われ、既存の慣習が再検討された時期として振り返っています。
ただし、今回の装いは、その歴史をそのまま再現したものではありません。考え方を、現在の日常着へ置き換えています。
服は淡いブルー、白、アイボリーで軽くまとめ、Ferragamoのバッグ、CHANELのサングラス、Maison Margielaの足袋ブーツを黒で統一。
黒は単なる差し色ではなく、自由に動かした丈と幅へ境界を与えるフレームです。
形を変える場所は袖とパンツに絞り、それ以外は共通色で制御する。全アイテムを奇抜にしないからこそ、造形的な装いが街の中で成立しています。
| AVANT-GARDE STYLE MAP | LOOKでの役割 | 手持ちの服で試すなら |
|---|---|---|
| 短いジャケット | 腰位置を高く見せる | 着丈が腰で終わるアウターを選ぶ |
| 長いカフス | 腕の比率を変える | シャツの袖口をアウターから出す |
| 大きなボトム | 脚の形と分類を曖昧にする | 袴型パンツやロングスカートで代用する |
| 黒い小物 | 淡色と自由な形を安定させる | バッグと靴、または眼鏡と靴を黒で揃える |
ここで参考にしたいのは、特殊な服を探すことではありません。
普段着ている服の丈を一か所変える。袖口を長く見せる。明るい服へ黒いバッグを加える。その小さな変更だけでも、見慣れた組み合わせは新しく見え始めます。
CLASSIC VS AVANT-GARDE
伝える情報を絞ることで、印象はより強く残る。
二つを並べたとき、最も大きな違いは、装飾の多さではありません。
トレンチのLOOKは、柄、タイ、帽子、手袋、バッグと多くの要素を使っています。それでも静かに見えるのは、色とシルエットに連続性があるからです。
デニムのLOOKは、装飾自体を抑えています。それでも強く見えるのは、短い上半身と大きな下半身の間に、明確な差があるからです。
| 比較する場所 | CLASSIC | AVANT-GARDE |
|---|---|---|
| 視線の動き | 上から下へ連続して流れる | 上半身と下半身の間で切り替わる |
| 個性の作り方 | 柄、色、小物を細かく編集する | 丈、幅、開き方を変える |
| 身体との関係 | 服の中に動ける余白を作る | 服によって身体の比率を変えて見せる |
| 小物の役割 | 全身を滑らかに繋ぐ | 全身へ明確な境界を作る |
| 注意点 | 色数を増やしすぎない | 変形させる場所を増やしすぎない |
比較することで分かるのは、自分が「繋がり」と「差」のどちらへ惹かれるかです。
色や小物を細かく連動させたいのか。シルエットを一つ動かして、全体の印象を変えたいのか。
感覚的な好みを具体的な方法へ置き換えられることに、この二つを並べる意味があります。
FIND YOUR ENTRY POINT
服の好みから、貴方の性格を決める必要はありません。どこへ目が留まったかを確認すると、次に試すべき着こなしが見えてきます。
| 惹かれたポイント | 次に試すこと |
|---|---|
| 柔らかな縦長のシルエット | ロングコートとワイドパンツの幅を揃える |
| 柄を重ねた首元 | 同じ色域のシャツとスカーフを合わせる |
| 革小物の統一感 | バッグと靴、またはベルトと時計を揃える |
| 短いアウターと長いパンツ | 上下の着丈へ明確な差を作る |
| 長いカフスやスリット | 袖、襟、裾の一か所だけを誇張する |
| 淡色と黒のコントラスト | 顔、手元、足元のうち二点へ黒を置く |
HOW TO TRY
| LEVEL | CLASSIC | AVANT-GARDE |
|---|---|---|
| EASY | コートのベルトを緩く結ぶ | 短いアウターと長いボトムを合わせる |
| STANDARD | 柄を一点加え、小物を同系色で揃える | 長いカフスかスリットを一か所加える |
| HIGH-END | 同じ色域で柄を重ね、金具まで連動させる | 比率を動かしながら、黒い小物で全体を制御する |
BETWEEN CLASSIC AND AVANT-GARDE
どちらか一方を選ばず、二つの方法を組み合わせることもできます。
| 土台 | 加える要素 | 生まれる変化 |
|---|---|---|
| トレンチとスラックス | 長いカフスを袖口から出す | 端正な装いに構造的な違和感が加わる |
| 短丈ジャケットとワイドパンツ | 革小物をブラウンで揃える | 大胆な比率が柔らかく整う |
| 柄シャツとタイ | アウターを短くする | 装飾性と新しいプロポーションが共存する |
| 淡色のレイヤード | 小さなクラシックバッグを合わせる | 軽い配色に繊細な品格が加わる |
この中間にこそ、貴方らしい着こなしが見つかるかもしれません。
自分らしいスタイルは、一つの名称へ固定するものではありません。
Paris Classicが示しているのは、整った服を柔らかく着る方法です。
Paris Avant-gardeが示しているのは、日常着の比率を変え、新しく見せる方法です。
一方は、形を残して緊張を和らげる。もう一方は、服を残して前提を動かす。
異なる装いから惹かれた要素を選び、自分の身体、生活、手持ちの服へ合わせて調整することで自分らしいスタイルが形づくられます。
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