【新年とラグジュアリー】
カレンダーの「切れ目」としてのファッション
年が変わるとき、私たちは自然と「今年はどんな服を着ていこうか」と考えます。
その感覚は、単なる気分ではなく、ファッションの仕組みそのものと強く結びついています。
新年は、ブランドにとっても
・一年を締めくくる「祝うための服」
・次の一年をかたちづくる「これからの服」
が、同じテーブルに並ぶ時期です。
ここでは、新年というタイミングを
ホリデー、旧正月、一月のコレクションという三つの軸から整理し、
最後に、MOODとして何を意識したいかをまとめます。
【1 新年は「次のシーズンが立ち上がる月」】
街の空気としては、まだ冬の真ん中にいる一月。
ですが、ファッションカレンダーのうえでは、ここからすでに「次の一年」が動き始めます。
・フィレンツェのピッティ・ウオモ
・ミラノ・メンズファッションウィーク
・パリ・メンズファッションウィーク
・パリ・オートクチュールウィーク
といったスケジュールが一月に集中し、そこで発表される秋冬コレクションやクチュールが、その年のムードをゆっくりと決めていきます。
年末のきらびやかな売り場と、一月のランウェイのストイックさ。
その落差もまた、「新年らしい風景」の一つと言えるかもしれません。
【2 ホリデーコレクションが担う「年越しのドレスコード」】
欧米のラグジュアリーブランドにとって、
クリスマスから大晦日までのホリデーシーズンは、年間でもっとも大きな山場です。
この時期に用意されるのが、
いわゆるホリデーコレクションやパーティー向けのカプセルライン。
・光沢のあるサテンやシルク
・ビジューやメタルをあしらったドレスや小物
・夜の時間を意識したブラック、ゴールド、ディープレッド
こうしたアイテムは、
一年の締めくくりをどのように飾るか
どんな姿で新しい一年に入っていくか
という、個人的な「年越しの儀式」に寄り添う役割を持っています。
興味深いのは、ここで選ばれた服やアクセサリーの一部が、
年が明けたあとも、日常のワードローブのどこかに残っていくことです。
ホリデー向けのピースは、
「そのときだけの華やかさ」と
「日常に持ち込めるきらめき」
その境界線を試す場所でもあります。
【3 旧正月とカプセルコレクション】
【赤と金、干支、そしてブランドコード】
近年、新年のことを考えるうえで欠かせないのが、
アジア市場に向けた「旧正月カプセルコレクション」です。
多くのブランドが毎年、
・干支
・赤と金を中心としたカラーリング
・花やドラゴンなどの吉祥モチーフ
を取り入れた限定ピースを発表しています。
その際、ブランドは必ず「自分たちらしさ」と組み合わせて見せます。
・バッグやシューズにだけ干支のモチーフを添える
・アイコンバッグの色や金具だけを旧正月仕様に変える
・シグネチャープリントの中にさりげなくモチーフを紛れ込ませる
ここでは、三つの要素が重なります。
・祝祭の色としての赤と金
・地域に根ざした干支や縁起物
・ブランド独自のロゴやパターン、シルエット
旧正月カプセルは、
ブランドがどの程度まで自分たちのコードを書き換えるのか、
どのくらいのバランスで「迎合」と「らしさ」を保つのかが、はっきり可視化される場です。
数年後に振り返ると、ある年の旧正月コレクションには、
そのブランドがその時点でアジア市場とどう向き合っていたか、という「空気」がそのまま残っています。
【4 一月のランウェイが示す「一年の入口」】
ホリデーシーズンや旧正月のカプセルが扱っているのは、
「いまこの瞬間のお祝いの服」です。
一方、一月のメンズコレクションやオートクチュールは、
その年のムードを、じわじわ広げていくための起点になります。
メンズの秋冬コレクションでは、
・コートやジャケットの新しいシルエット
・パンツの太さや丈のバランス
・色のトーンやレイヤードの感覚
といった「長く続くライン」が提案されます。
オートクチュールでは、
現実とは少し距離のある、服作りの極端な表現が行われますが、
そこから一部のアイデアが、プレタポルテやセカンドラインに穏やかな形で移植されていきます。
新年というカレンダー上の区切りは、
・すぐに着るためのホリデーの服
・一年かけて浸透していくランウェイの服
この二つが同時に存在する時期であり、
「今」と「これから」を並べて眺めることができる、少し特別なタイミングでもあります。
【5 新しい年に、MOODが考えていること】
MOODのブログを読んでくださっている方は、
すでにブランドの歴史や、服の文脈に敏感な方が多いと思います。
そうした前提のうえで、新しい年の始まりに意識したいのは、
・どのブランドの、どの時代の服を
自分の一年の景色に連れていくか
・ホリデー的な高揚感と、普段の静けさを
ワードローブのなかでどのような比率にするか
・「今年だけ」の一枚ではなく、
数年後に振り返っても意味が残るピースをどう選ぶか
といった、少し長い時間軸での視点です。
ラグジュアリーブランドのホリデーや旧正月のコレクション、
一月のランウェイを追いかけていると、
「今年らしさ」とともに、
「この先も残っていきそうな線」も、うっすら見えてきます。
新しい一年のMOODは、その線を静かに探しながら、
年代を越えて愛されてきた服と、これからの街の空気を、
丁寧に結び直していきたいと考えています。