"Christian Dior" 90’s Stand-up collar shaped jacket

オートクチュールの精神を土台に、時代のムードを大胆に取り込みながらも品格の輪郭を崩さず更新してきたChristian Diorより、アイコニックな逸品をご紹介致します。

端正なスタンドカラーと艶を抑えた大ぶりボタンが、90年代の知性をそのまま輪郭として纏わせるChristian Diorのジャケットであるこちらの逸品。

本個体は白地にセリフ体の「Christian Dior」タグに加え、サイズ表記がフランス規格ではなくJIS由来の「9」となっている点から、日本国内ライセンスライン（百貨店向けプレタポルテ）であることが明確と言えますね。さらに、品番が「MD」から始まる管理コードである点も、当時カネボウが主要ライセンスホルダーとして製造していた個体群の仕様と整合し、1990年代レンジと捉える信憑性を静かに担保しています。

デザインは、テーラードの“襟を見せる”発想ではなく、首元に沿って立ち上がるスタンドカラーで“余白を整える”アプローチが魅力です。前立てはややオフセットした重なりに、くるみボタン調の大ぶりボタンを縦に配し、装飾を足すのではなく面の緊張感でモードを作る構成になっています。胸からウエストへ自然に絞りが入り、背面も縦のラインで落ち方を制御しているため、着るだけで姿勢が良く見える“ソフトな構築性”が生まれますね。加えて、ポケットは主張しすぎない位置と分量で収められ、ボタンの存在感を邪魔しないバランス感覚もこの時代の百貨店クオリティらしい丁寧さと言えます。ウール主体のアウターとして秋冬に強い安心感があり、光を吸い込むような深いトーンが、場面を選ばず品格へ接続してくれます。

スタイリングとしては、シャツとスラックスで潔くまとめるとスタンドカラーの緊張感が際立ちますし、ミニマルなワンピースに重ねて“面”で魅せる方向へ振るのも相性が良いです。あるいは上質なロングスカートと合わせ、直線と曲線の対比で静かな華やぎを作るのもおすすめです。

是非この機会に。