-SPECIAL- “GUCCI × ZAMASPORT” 1989–1994 Double Breasted Long Coat

左腕シミあり 内ボタン欠損 背中上部穴あり

「最上の伝統を最上の品質で、過去のよいものを現代に反映させる商品作り」 というコンセプトを掲げるGUCCIより、スペシャルな逸品をご紹介致します。

豊かな起毛感をたたえたウールが光をやわらかく吸い込み、深みのあるキャメルブラウンの面が装い全体を穏やかに引き締めることで、クラシックとモードの均衡を上品に結ぶこちらの逸品。

本作は、**1989〜1994年頃のGucci（Zamasport for Gucci期）**に製造されたアーカイブピース。

ジャンニ・ヴェルサーチやダウンティング期以前、そしてトム・フォードがクリエイティブディレクターに就任する直前の、Dawn Mello〜Maurizio Gucci体制下で生まれた一着です。

この時期はイタリア・ノヴァーラに拠点を置く高級アトリエ Zamasport（ザマスポルト） がGucciのプレタポルテ生産を担っており、同社製タグ「PRODUCED BY ZAMASPORT FOR GUCCI」が付くコレクションは、現在ではコレクターズアイテムとして高い評価を受けています。

ZamasportはValentinoやMax Maraの製造も請け負っていた一流縫製メーカーであり、本作にもその精緻な仕立てが色濃く表れています。

ラペルの角度、芯地の据え方、裏地のすべり、チェーンハンガーの仕立てに至るまで、90年代初頭のGucciが誇ったクラフツマンシップが凝縮されています。

ウール55%、アンゴラ25%、レーヨン20%という素材構成は当時のハイエンドライン特有のもので、軽やかさと保温性、そして光沢のある表情が見事に両立されています。

大ぶりのラペルは端正な角度で開き、胸元に重ねた前合わせが立体的な陰影を生む為、顔周りに自然な奥行きが生まれますね。前身頃は整然と並ぶダブルのボタンで縦のリズムが生まれ、ウエスト位置のベルトがラインを結ぶことで、前を留めても開けても美しいバランスを保つ設計と言えます。

腰には丸みをもたせた大きめのパッチポケットが配され、手を差し入れた所作まで上品に映り、カフは段差のある切り替えで袖口に重みを与え、ロングレングスの裾は歩くたびにわずかな揺れを描きます。

背面はヨークの曲線で肩線をすっきり見せ、縦に通したシームが後ろ姿を端正に整える為、後ろからの印象まで抜かりがありません。内部は滑りのよいライニングで袖通しが軽く、季節の変わり目から真冬までインナー次第で幅広く落とし込んで頂けますね。

また、ボタンには「GUCCI」刻印入りの水牛調ボタンを採用し、80年代までの金属ボタンから移行したこの仕様は、まさに1989〜1994年期特有のディテール。

細やかな仕立てと穏やかな曲線が織りなすフォルムは、トム・フォード以降のシャープなGucciとは異なる、旧グッチの静謐なラグジュアリーを体現しています。

付加価値として、ダブル×ベルトに大きなパッチポケットと背面ヨークを組み合わせることで、ミリタリー由来の骨格をドレス方向へ品よく昇華している点が挙げられ、ウールの厚みと起毛面の柔らかさが“重厚さと軽やかさ”を同時に叶えるのはGUCCIならではと言えますね。

前を留めれば彫りの深いシルエットが立ち上がり、ベルトを軽く結べば余白のあるリラックス感へと表情が変わる為、シーンに応じてムードを自在に操れるのも魅力です。質感で個性を語りたい方、静かな佇まいの中に確かな強さを宿したい方に心強い一着と言えます。

スタイリングとしては、色気のあるVネックニットにウールトラウザーを合わせ、ロングブーツで重心を受け止めると、ダブルの直線がいっそう際立ち、端正でモードな空気に仕上がります。

また、白シャツにタイを軽く締め、ショート丈のベストを挟んでからコートを重ねる組み合わせもおすすめで、クラシックを今の感覚で更新できると言えますね。

是非この機会に。