「遊び心がつくるラグジュアリー — MOODのスタイリング哲学」
MOODが掲げる“遊び心のあるラグジュアリー”とは、単なるドレスダウンや奇抜さではない。
それは、素材や仕立ての完成度というラグジュアリーの根幹を守りながら、スタイリングの中に意図的な緩みや意外性を差し込むことで生まれる、新しい余白のことだ。
私たちのスタンスは、完璧を崩すのではなく、完璧の中に遊びを紛れ込ませること。
その“遊び”は、決して軽く見えるためのものではなく、むしろ着る人の個性を際立たせ、ラグジュアリーの価値をより鮮やかに見せるための仕掛けである。
例えば、エレガントなロングドレスにアーティスティックなスカーフを結び、布の動きに偶発的なリズムを加える。
あるいは、クラシックなテーラードジャケットに、あえてロングネックレスを無造作に絡ませることで、静と動のコントラストを演出する。
重要なのは、その組み合わせが安易なカジュアル化ではなく、ラグジュアリーの骨格を保ったままの“遊び”であることだ。
この哲学と親和性の高いデザイナーの一人が、アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)だ。
サンローランで彼が見せる、鋭いカッティングと官能的な肌見せの間に漂う余白は、まさにMOODが求める「緊張と緩和」のスタイリングを体現している。
完璧に計算されたラインを、あえてロングブーツやオーバーサイズのアウターで崩す発想は、私たちの提案と重なる部分が多い。
また、マルタン・マルジェラ(Maison Martin Margiela)のデザインアプローチも外せない。
アーカイブを解体し再構築する手法や、非対称性を意図的に取り込む造形は、ラグジュアリーに対する“挑発的な遊び”であり、MOODの遊び心の美学と深く通じ合う。
ラグジュアリーを固定観念から解き放ち、新しい解釈を生む姿勢は、現代のスタイリングにおいて強い影響力を持っている。
さらに、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が率いたロエベ(Loewe)も注目すべき存在だ。
アートピースのようなドレスや、日常性と非日常性を交錯させるバッグのデザインは、まさに遊び心のあるラグジュアリーの象徴。
日常の延長線上でありながら、ふとした瞬間にアートのように視線を奪う存在感は、MOODが提案するワードローブの核に近い。
コレクションとして特に参考になるのは、サンローランの2023AWで見られたオーバーショルダージャケットとタイトスカートのコンビネーション、マルジェラの2012SSアーティザナルコレクションの解体ドレス、ロエベの2024SSで披露されたスカルプチュラルなニットドレスなど。
どれもラグジュアリーの品質を軸にしながら、そこに遊びを注ぎ込み、スタイリングの幅を無限に広げている。
MOODが目指すのは、この哲学を現実のワードローブに落とし込み、日常で纏える形にすること。
ラグジュアリーは単なる格式ではなく、自分らしさを投影できる余白を持ったものこそが、本当に息づく。
遊び心はその余白を広げ、着る人の物語を刻むための最良のツールである。
そして私たちは、その物語を最も美しく響かせる組み合わせを、これからも探し続けていく。